Scrap/Book2009.08.09 22:47
できる限り、軽々しく言った。春が以前、病室で漏らした言葉が、頭から離れない。
「本当に深刻なことは、陽気に伝えるべきなんだよ」
まさに今がそうだ。ピエロは、重力を忘れさせるために、メイクをし、玉に乗り、空中ブランコで優雅に空を飛び、時には不恰好に転ぶ。何かを忘れさせるために、だ。私が常識や法律を持ち出すまでもなく、重力は放っておても働いてくる。それならば、唯一の兄弟である私は、その重力に逆らってみせるべきじではないか。
脳裏には、家族全員で行ったサーカスの様子が蘇った。
「そうとも、重力は消えるんだ」
父の声が響いた。
私の無茶苦茶な言葉が、春を納得させるとは到底思えなかったが、ブランコを使い空を飛ぶピエロよりも命がけで、祈っていた。重力を消してほしい、と祈る。少しくらい消えても罰はあたらないじゃないか、とも思った。
頼むよ、と。


Posted by Lynn*