'重力ピエロ'에 해당되는 글 4건

  1. 2009.08.09 重力ピエロ、4
  2. 2009.08.09 重力ピエロ、3
  3. 2009.08.09 重力ピエロ、2
  4. 2009.08.09 重力ピエロ、1
Scrap/Book2009.08.09 22:47
できる限り、軽々しく言った。春が以前、病室で漏らした言葉が、頭から離れない。
「本当に深刻なことは、陽気に伝えるべきなんだよ」
まさに今がそうだ。ピエロは、重力を忘れさせるために、メイクをし、玉に乗り、空中ブランコで優雅に空を飛び、時には不恰好に転ぶ。何かを忘れさせるために、だ。私が常識や法律を持ち出すまでもなく、重力は放っておても働いてくる。それならば、唯一の兄弟である私は、その重力に逆らってみせるべきじではないか。
脳裏には、家族全員で行ったサーカスの様子が蘇った。
「そうとも、重力は消えるんだ」
父の声が響いた。
私の無茶苦茶な言葉が、春を納得させるとは到底思えなかったが、ブランコを使い空を飛ぶピエロよりも命がけで、祈っていた。重力を消してほしい、と祈る。少しくらい消えても罰はあたらないじゃないか、とも思った。
頼むよ、と。


신고
Posted by Lynn*
Scrap/Book2009.08.09 22:38
寒さをしのぎたいがために、火を放ちたくなる人もいるかもしれないな、と私が言うと、春は、「世界最初の放火魔は誰か知ってる?」と言ってきた。
「さあ」
「百万年以上前に存在していたホモ・エレクトゥス、原人の誰かだ。火を発見して、次にやることは火を放つことだから」
「そういうのは、放火魔と呼ばない」
「原人に対して、クロマニョン人つまりはホモ・サピエンスのことを、『新人』と呼ぶのは知ってる?」春は好んで話題を逸らしていく。「何万年も生きているのに俺たちはいまだに、『新人』ってことだよ」
「三億年以上生き残っているゴキブリは、『ベテラン』かもな」
「そうだよ、兄貴。これからはあれをベテランと呼ぶべきだ」


신고
Posted by Lynn*
Scrap/Book2009.08.09 22:31
そして、ピエロだ。
その存在についてはテレビや本で知っていたけれど、じかにピエロを目にしたのは、はじめてだったはずだ。おそらく春もそうだったに違いない。
ピエロは、無言のままパントマイムを続け、泣き顔のメイクをしているにもかかわらず、陽気にタップを踏み、私たちを混乱させた。違和感があったのだ。違和感を背負いつつも、表情を変えずに、つぎつぎと観客から笑いを引き出している。
ああ、と春がうめくような声を上げたのは、空中ブランコがはじまった時だ。

・・・

「あんなに楽しそうなんだから。落ちるわけがないよ。かりに落ちたって、無事に決まってる」
母の口にしたのは、まったく根拠のない理屈ではあったけれど、そう言われてみると、泣き笑いの表情をした、無邪気さ丸出しのピエロが、呆気なく落下することはないように思えた。よしんば手を滑らせ、無様に降下したとしても、動揺を浮かべたり、怪我を負うことはないようにも感じた。そんなことがあっては道理に合わない、と。
「ふわりふわりと飛ぶピエロに、重力なんて関係ないんだから」
「そうとも、重力は消えるんだ」父の声が重なってくる。
「どうやって?」私が訊ねる。
「楽しそうに生きれば、地球の重力なんてなくなる。
「その通り。わたしやあなたは、そのうち宙に浮かぶ」


신고
Posted by Lynn*
Scrap/Book2009.08.09 22:20
「母さんから妊娠のことを知らされた時、俺は咄嗟に相談したんだ」父がそう言ったことがある。
「相談って誰に」
「神様に」それから、苦い果物を噛み砕くような表情をした。「笑うだろ」
「神仰もないくせに?」
「神仰もないくせに。一瞬のことだったんだろうが、俺は空を見上げて質問をぶつけていたんだ。どうすることが正解なのか教えてくれとな。即席で、神に祈ったわけだ。ああいう時に頼れるのは、神様くらいだ」
「節操がない」
「必死だった」
「で、返事はあったわけ」
「あった。声が聞こえた」
あったのかよ、と私は笑う。
「思い違いかもしれないが、はっきりと聞こえたんだ」父が冗談を言うようでもなかった。「俺の頭の中に怒鳴り声が聞こえた」
「神様が怒鳴るとは。何と言ってきたわけ」
「『自分で考えろ!』」
「は?」
「『自分で考えろ!』ってな、そういう声がしたんだ」
私は噴き出した。「無責任にもほどがあるじゃないか」
「だがな、考えてみると、これは神様の在り方としては、なかなか正しい」
「そうかな」
「俺は即座に決断した。自分で考えたんだ」


신고
Posted by Lynn*

티스토리 툴바